2019-01-14

アメリカ株の「連続増配年数に潜むからくり」に注意:隠れた「配当貴族」もある

Grüß Gott / Hello

株主還元に優れた企業を探す条件として、特にアメリカでは「連続増配年数」が注目されます。

「配当貴族」という称号の裏に潜む「からくり」などに思うことです。

  「配当王」と「配当貴族」への評価


アメリカでは50年以上連続増配を記録した企業を「配当王」、25年以上連続で「配当貴族」と称しています。

「配当王」は30社ほど、「配当貴族」にいたっては100社を超えるほどあります。

企業のホームページのIR情報でも、この連続増配実績をアピールしている企業が数多く見受けられます。

このことからも、株主還元の姿勢を「連続増配年数」で評価する傾向があるのだと思います。

日本に当てはめると、残念ながら「配当王」はなし、「配当貴族」は花王(4452)などわずかな銘柄しかありません。

英国の場合はどちらかという配当性向を重視する傾向があるため、アメリカほど「連続増配年数」が注目されることは無いようです。

日本企業は最近ようやく株主還元を重視するようになりましたが、今後アメリカ型(連続増配重視)に向かうのか、英国型(配当性向重視)に向かうのかに注目ですね。

  「連続増配年数に潜むからくり」


「連続増配年数」を評価する傾向が強いアメリカですが、連続増配年数を維持するために少々強引な「からくり」もあります。

たとえば、以下のようなA社とB社の四半期毎の配当実績があったとします。
A社B社
Div.DGRDiv.DGR
2013-Q11.001.00
2013-Q21.001.00
2013-Q31.001.00
2013-Q41.001.00
20134.00-4.00-
2014-Q11.001.07up
2014-Q21.001.07
2014-Q31.001.07
2014-Q41.04up1.07
20144.041.00%4.287.00%
2015-Q11.041.07
2015-Q21.041.07
2015-Q31.041.07
2015-Q41.041.07
20154.122.97%4.280.00%
2016-Q11.041.14up
2016-Q21.041.14
2016-Q31.041.14
2016-Q41.08up1.14
20164.200.96%4.566.54%
2017-Q11.081.14
2017-Q21.081.14
2017-Q31.081.14
2017-Q41.081.14
20174.322.86%4.560.00%
2018-Q11.081.21up
2018-Q21.081.21
2018-Q31.081.21
2018-Q41.12up1.21
20184.360.93%4.846.14%
TTL25.0826.52
5Y-DGR1.74%3.94%

連続増配年数記録に焦点を当てると、A社は5年連続増配となり、B社は2015年と2017年に途切れていることになります。

しかし、A社の増配は5回あったわけではなく、隔年Q4に実施した各3%の3回のみ、実態は2年に1度に近い増配ペースなのですが、連続増配年数記録は維持されます。

一方、連続増配年数は途切れた形のB社ですが、隔年Q1に各7%の増配を実施した結果、対象期間での配当金総額と5年間の平均増配率はA社を上回ります。

このように「連続増配年数」だけでスクリーニングしてしまうと、配当実績に劣るA社が残り、優れたB社は候補から消えてしまいます。

アメリカには「配当貴族」が100社以上もあるわけですから、一定の条件で切っていかないと候補を絞りこめない事情はありますが、連続増配年数の「からくり」に気づかず表向きの数字だけで絞りこんでしまうと、隠れた「配当貴族」を見逃してしまうことになります。

※50年連続以上の「配当王」になると、さすがにこの「からくり」を指摘するレベルは脱しているとは思いますが。。。

  隠れた「配当貴族」を見つける


「連続増配年数のからくり」を見抜き、隠れた「配当貴族」を見つけるためには、次の点に注目しています。

  1. 減配していない年数
    ・好業績でも企業が増配しない理由は様々ですが、配当による長期的なインカム投資を目的とする立場からは「減配していない」という条件は必須になるかと思います。
    ・「連続増配年数」同様に、少なくともリーマンショックを乗り越えての実績が必要だと思います。

  2. 増配回数率
    ・どんなに「減配していない」でも、3~5年も配当据置では先々の財務不安や業績不安、あるいは株主還元の姿勢を疑ってしまいます。
    ・感覚的には2年に1回(増配回数率50%以上)の増配実績はあってほしいものです。

  3. 平均増配率
    ・中長期間の平均増配率から、「連続増配年数」を維持する企業に負けない実績を有しているかを判断することができると思います。
    ・ただし、近年の平均増配率が高いからといって今後も継続するとは限りませんし、逆に現在の増配率が低い企業が状況改善で高くなることも有り得ます。「高配当が未来永劫続くわけがない」と言うならば、「高増配率が未来永劫続くわけがない」も言えます。
    ・現在の配当利回りの差をしっかり踏まえた上で検討しなければいけないと思います。

わたしが見つけた隠れた「配当貴族」銘柄についてはまとまったらおいおい記事にしていきたいと思います。

  「減配していない年数」がわかる配当データ


当ブログでは、日経225採用銘柄「減配していない年数」「増配回数率」「平均増配率」を掲載しています。

🔖  このブログの[配当データ] ページはこちら
  日経225採用銘柄の配当データ
    (Japan NIKKEI225 Dividend Data)
    ・連続増配年数
    ・減配をしていない年数
    ・1/3/5/10年間の平均利回り
    ・1/3/5/10年間の平均増配率
    (Last Updated 31.Dec.2018)>

アメリカ株については、S&P500採用銘柄の配当データを2018年次で集計中なのですが、もうすこし時間が掛かりそうです。

「連続増配年数」を把握できるサイトやデータは多数あるのですが、「減配していない」を焦点にすると情報が少なく苦労しています。

各企業のIR情報も「連続増配年数」が始まった年度から掲載していることが多いようです。

それなりに仕上がったら、日本株と同様に掲載したいと思っています。。。


というわけで、次の購入候補をスクリーニング中のチキンハート(CH)でした。

LINK

Danke schön und Auf Wiedersehen / Thanks and See you

0 件のコメント:

コメントを投稿