日本の配当銘柄のひとつだったローソン(2651)が来期40%の減配を発表しました。
他人事とは思えないニュースなので減配に至った過程を検証してみたいと思います。
目 次
- ローソン(2651)の業績と配当実績
- 減配に至った過程
- 配当性向の上昇
- ROAの下落
- 継続的な自社株買いの実績が無い - 経営者交代との関係
- ローソン(2651)への投資について
ローソン(2651)の業績推移と配当実績
《業績》
📍 売上と営業利益
- 売上は右肩上がりに伸ばしていますが、営業利益率は逆に右肩下がりでした。
📍 キャッシュフロー
- キャッシュフローには取り立てて気になる変化は見られませんでした。
《配当》
📍 配当と自社株買い
※Buybackは自社株買い
ローソン(2651)は今期(2019.2)まで8年連続増配&20年減配なしを継続していました。
10年間の平均増配率は10%近くを記録しており、日本では真っ先に名前が挙がる配当銘柄のひとつでした。
自社株買いについては、継続的な実施はしていなかったようです。
4/12の同社発表では来期(2020.2)の減益予測とともに40%減配、同時に株主還元方針を明確にし、『年間配当150円を下限とし、配当性向50%を目標とする』とのことです。
発表後の株価は最大-14.55%(終値-12.21%)の失望売りとなりました。
減配に至った過程:配当性向とROAの変化
《配当性向の上昇》
昨期(2018.2)から配当性向が100%近くに急上昇していました。(前項の配当グラフ)
配当を維持する一方で配当性向が上昇するということは当然ですがEPSが減少していることになります。
このEPSの減少が投資CFの拡大や特損による短期的な要因であれば理由はつくのですが、ローソン(2651)の場合は投資CFが拡大した形跡はなく、営業利益率と最終利益率の減少度合いにも差がないことから特損等の影響もないということになります。
、
単純に、利益率の悪化がもたらしたEPSの低下→配当性向の上昇、と考えられます。
📍 利益率とROA
※薄グレーはセブン&アイ(3382)のROA
《ROAの下落》
配当性向の100%接近とともにROAの落ち込みが顕著で、今期(2019.2)もROAは改善されずさらに1.91%と落ち込んでいます。
ROAはROEと異なり負債資産も含めた経営効率を表します。業種にもよりますが、金融セクター以外はおよそ5%以上が良好、2%未満が不良とされ、ROEとの格差が小さいことが好まれます。
ローソン(2651)の5年前からの推移では、ROEが≒40%減に対し、ROAは≒70%減と悪化が大きいのです。
同業他社のセブン&アイ(3882)のROA(3.5%)との比較を見ても、昨期(2018.2)を境に逆転されており、ローソン(2651)の業績がセクター内でも思わしくないことが伺えます。
ROAの著しい下落と2%を切る低水準が減配までに表れた特徴的な現象といえると思います。
特に日本人はバブル崩壊後の負債、不良債権に対するトラウマがあるので、ROAの悪化が配当計画に影響するのかもしれないですね。
海外の石油メジャーのように借金してでも配当を払うという手段はありえないことでしょう。
《継続的な自社株買いの実績が無い》
ローソン(2651)には継続的な自社株買いの実績がありませんでした。
ということは、株主還元の縮小は減配手段しかなかったことになります。
継続的な自社株買いは減配回避の余力指標としての意味を持つのかもしれません。
減配に至った過程の背景をまとめてみると、
POINT
- 投資CF拡大や特損もないのにEPSが減少し、配当性向が100%に接近していたこと
- ROAが急降下し不良水準の2%未満に低迷していたこと
- 継続的な自社株買いの実績がなかったこと
ということになるでしょうか。
経営者交代との関係
減配に至る過程では偶然かもしれませんが、経営者交代との関連性も気になりました。
📌 ローソン(2651)の経営者交代
- 2005年3月 新浪剛史氏(元三菱商事)がCEOに就任
- 2014年5月 玉塚元一氏が社長就任…新浪氏は退任
- 2016年6月 竹増貞信氏(元三菱商事)が社長就任…玉塚氏は会長就任
- 2017年5月 玉塚元一氏が会長退任
玉塚元一氏がわずか3年という短期間で経営陣から退いたことが気になります。
玉塚氏は現在デジタルハーツ(3676)の社長ですが、2002~2005年まではファーストリテイリング(9983)社長に就任しています。
ファーストリテイリング(9983)では柳井正氏の後を受け社長に就任しましたが、こちらも3年という短期間で退任、しかも柳井正氏が急遽再登板という微妙な過去があります。
玉塚氏は経営者としての才覚に色々と疑問を取り沙汰されている人物ですので、こういった要因も無視できません。
ローソン(2651)への投資について
小売セクターというのは競争が激しく、ことコンビニにおいては過剰な出店傾向に危うさを感じるのと、最近話題の営業時間に起因する人件(権)費などコストの問題も抱えているので、投資対象としては成長を期待できる反面、不安要素が多いです。
今回、減配を発表したことで、わたし的には購入候補にすることはないと思います。
赤字に陥ってもいないのに真っ先に減配してしまった点は株主軽視とも受け取れ、アメリカならば理由はどうであれ即刻経営者交代です。
ローソン(2651)さんのサイトでは、これまでの配当実績に反して株主還元に関する具体的なアピールや指針記載がなかったので、実はその程度の意識だったのかもしれません。
📌 情報元:ローソン -IR情報
- ➤配当金と配当性向の推移
- ➤配当金と配当性向の推移
しかし、この減配を機に株主還元の明確な基準を掲げた点だけは評価して良いと思います。
今後の利益成長と配当継続性を期待するなら、配当利回りを目安に購入すべき株価はわかりやすくなったのではないでしょうか。
というわけで、ローソン(2651)以外の減配に至った企業にも共通する現象があるかを調べてみたいです。
LINK
Danke schön und Auf Wiedersehen / Thanks and See you
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