2018-11-18

ブレグジットのこと(2):英国内で揉めていることを整理

Grüß Gott / Hello

英国EUで合意されたブレグジットの草案をめぐって英国内が紛糾しています。

メディア報道では一体何を揉めているのかわかりませんので、ちょっと整理してみました。


  英国離脱に向けての大きな問題は4つ


① 既に英国に在住している移民の権利
② 英国がEUに支払う精算金の額
③ 新しい通商条約
④ 北アイルランド国境の事情

英国内で粉糾しているのは「④北アイルランド国境の事情」です。

①の人権を守ることは当然のことです。
②と③は最終的には「決め」の問題です。

③は時間の掛かることなので離脱後の交渉となることの認識は一致しており、新しい通商条約が結ばれるまでは現行どおりだと考えて良いかと思います。

  ④北アイルランド国境の事情とは


この問題はEU離脱だけの問題では収まらず、過去の「北アイルランド紛争」の歴史にまで遡る問題なのです。

英国とアイルランドは『ベルファスト合意』という和平合意を1998年に結んでいます。

この合意はEUの『アムステルダム条約』の調印(1997年)の後に結ばれていることもポイントとして抑えておく必要があります。

ベルファスト合意は「北アイルランドの人は英国とアイルランド双方の市民権を持つことができる」というもので、当然ですが今現在(英国離脱前)はEUの市民権も持ちます。

英国がEUから離脱し国境管裡を復活させてしまうと、ベルファスト合意が実質破棄される状態になってしまい、再び同地域の紛争の火種となってしまいます。

  離脱草案と三つの異なる立場からの反対


A.離脱草案:

メイ首相を中心とする英国政府は北アイルランドとアイルランドの国境は設けず、③通商条約を取り決めた上での自由区域としたいわけです。

この点についてはアイルランド側の希望でもあり、EUも同意しています。

③通商条約の取り決めには時間がかかるため、その間の代替案=『バックストップ』が草案に盛り込まれました。


この北アイルランドをめぐる草案に対し、B.離脱強行派、C.北アイルランド右派、D.残留派と三つの異なる立場からの反対があります。


B.離脱強行派:

議会を分裂させてしまうかもしれない草案反対はこの立場です。

北アイルランドをめぐる『バックストップ』を含めたEUに譲歩するこの草案では連合王国としての主権を取り戻せないと反対しているわけです。

離脱強行派にとっては「英国主権」が経済以上に重要な事項であり、「合意なき離脱も辞さない」立場です。


C.北アイルランド右派:

閣外協力をしている民主統一党(DUP)は北アイルランドだけを国境のない自由区域とすること自体に反対しているわけです。

DUPは『ベルファスト合意』にも反対の立場です。

議席数は少数ですが、現政権が過半数を取るためにはこのDUPの閣外協力が必要な議席勢力図となっています。


D.残留派:

そもそも離脱に反対しているので、どのような草案であれ反対です。

最終的な目標は「国民投票のやり直し」です。スコットランドもこの立場になるかと思います。


今回の英国内の紛糾は、A.草案通りに進めて経済への影響を最小限に抑えようとする派と、B.の英国主権を何より優先する派の衝突と言えます。


日本のメディアは、なぜかD.残留派の立場からの反対をやたら映し出し、メイ首相の「ブレグジットやめますか?」発言を取り上げるのがお好きなようで、揉めている本質がわからなくなってしまいます。

  というわけで


英国民も、政治家も、EU側もそれぞれの立場で譲れないことがあるのでしょう。

英国が譲歩するのか、EUが譲歩するのか、英国内の話がまとまらず解散総選挙となり、場合によっては再度国民投票に戻るのか、じっと見守ることしかできません。

ただ、メディアやジャーナリストの報道だけを鵜呑みにすると投資では痛い目に合います。(…過去に合いました。)

もちろん、わたしの整理も間違っているかもしれません。

情報収集も自己責任です。



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