アーリーリタイアが話題となる昨今ですが、配当金生活を目指すなら課税の問題は無視できません。
米国株は日本株に比べて課税面でかなり不利になることを覚えておく必要があると思います。
配当金だけで生活した場合の課税比較
働いて一定の収入がある時には気付きにくいことですが、収入が配当だけになると、配当課税における日本株のメリットと外国株のデメリットがあります。
配当金300万円(税引前)を日本株だけで得る場合と米国株だけで得る場合とに区別し、それぞれ配当だけの生活、一定の収入がある場合とで実際にいくら課税されるかを比較してみました。(ドル円の為替損益はここでは考えません)
配当金300万円という設定金額は、月額にして25万円の生活レベル、1億円に対して3%の利回りと目標にしやすい金額なのでこの額をモデルにしました。
※所得税は扶養家族や様々な事情で異なると思いますが、とりあえず➤国税庁HPの年収から算出する所得総額に対し、一律15%を控除し課税対象額としています。(細かい端数は切りの良い金額、%に調整しています)
・グレー枠の赤字が課税額
・日本株の赤枠が配当控除の還付額
・米国株の青枠が二重課税の還付額,濃いグレー枠の赤字が還付されない額
- 収入が配当だけになると、課税上は日本株の方が断然有利になります。
- 米国株は収入が減るのに課税は増えるという悲しい状況に陥ります。
- 英国内の配当が非課税の英国株については、課税に変化はありません。
①『配当控除(-10%)』は日本株だけに適用される
日本株の配当は総合課税に入れると『配当控除(-10%)』が適用されるため、(難しい計算過程は除きますが)配当300万円のみの収入の場合は結果として15万円(5%)の課税で済みます。
5%は住民税です。国民健康保険が高くなるので住民税だけは源泉分離のままにし、総合課税の控除対象にしない方が良いようです。
なお、配当収入が300万を超えて、330万(10%)、695万(13%)、900万(源泉20%)を超える毎に実質配当課税は( )の税率に上昇します。
一方、外国株にはこの『配当控除』が一切適用されません。つまり、配当額に関係なく一律源泉20%を徴収されてしまいます。
②外国株の二重課税分の控除は課税所得がある人にしか適用されない
外国で徴収された配当課税(棒グラフの濃いグレー枠の赤字部分)を二重課税として控除してもらうには、日本での課税所得額が必要で、その額に応じて控除限度額が決まります。
日本国内での収入が無い場合、課税所得がゼロになりますから二重課税分は一切戻ってきません。
米国株での配当300万円の場合は、米国での配当課税10%=30万円を全額二重課税分として控除してもらうには課税所得額がおよそ500万円、年収に逆算するとだいたい700万円のラインが必要になるかと思います。
メモ
✎ 控除限度額の計算式(30万円を返してもらうためには)
30万円(控除限度額) = [500万円(課税所得) * 20%(所得税率)] * [ 300(外国株配当) / (700(年収) + 300(外国株配当)) ]
30万円(控除限度額) = [500万円(課税所得) * 20%(所得税率)] * [ 300(外国株配当) / (700(年収) + 300(外国株配当)) ]
国によって配当課税は変わります。英国をはじめ、インド、シンガポール、オーストラリアは配当非課税なので二重課税は発生しません。
【課税額の算出にあたり】
- 税金の算出は非常に難しく何通りも計算方法があります。根本的な誤りや他に配当控除の方法があるのかもしれません。配当金生活を目指す場合は、ご自身でも納得いくまで計算してみてください。
- 配当を申告分離課税に組み込み、株式の取引差益、いわゆる「損出し」で課税分を相殺する方法もありますが、年度のパフォーマンスによっては不確実であり、そもそも「損出し」という行為が配当重視の長期投資とは目的が沿わないと思うので考慮しません。
- NISAは外国株にも日本国内の課税が免除されますが、現時点では利用できる絶対額が低すぎるので対象外とします。
外国株偏重ではアーリーリタイアは遠のく?
配当利回り3%の日本株に対して、米国株で課税後同額を得るには配当利回り4%が必要となる計算になります。
また、同じ配当利回りから将来の増配率でこの課税額の差を埋めるには、比較対象の日本株の増配率+5%超の平均増配率を5年以上継続しなければ追いつけない計算となります。
日本株の高配当銘柄と同セクターの米国株の配当実績比較
※5Yは5年間平均, DGRは増配率
Yrsは連続増配, eYrsは減配していない年数
米国株の配当継続、増配の信頼度はとても高いですが、日本の課税制度の中で配当のみで生活しようとすると条件はかなり悪いと思います。
税制は時勢によって変わるものですし、年金破綻問題が囁かれる中、もしかしたら外国株にも配当控除が適用される可能性も将来考えられますが、基本的に日本株よりも外国株保有を優遇するような税制への変更は考えにくいと思います。
配当額が生活不安の無いレベルまで到達してしまえば、課税の問題など気にする必要はありませんが、配当で生活可能なレベルを目指している途中では、外国株だけではアーリーリタイアは遠のくと思います。
バランスが大切と思う
配当課税面では日本株が絶対的に有利というわけですが、だからといってすべて日本の高配当銘柄でポートフォリオを構成すれば配当金生活を早く実現できるのかと言えばそれもまた違うと思います。
日本の場合は「人口減少」という将来の成長力を疑う致命的な問題を抱えており、長期的な配当維持、増配を期待するには不安要素も大きいからです。
配当が出なければ課税問題もありません。
結局のところ、特定のマーケットに偏重することなくバランスをとっていくことが大切なのかなと思います。
いっそのこと非課税のシンガポールに移住するという手段もありますけどね・・・
というわけで、それぞれの投資生活がうまくいきますように。
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Danke schön und Auf Wiedersehen / Thanks and See you
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