2019-04-12

好増配銘柄の投資リスクについて

Grüß Gott / Hello

今日は「好増配銘柄の投資リスク」について考えてみます。

「高配当銘柄のリスク」についてはよく語られますが、「好増配銘柄のリスク」はあまり話題にならないような気がします。

  目 次



  好増配銘柄と高配当銘柄


"好増配銘柄"とは、ここでは増配率14%以上の銘柄とします。

増配率14%は5年維持すると配当額が倍になるラインです。ちなみに増配率7%なら10年で倍に到達します。

一般的には7%以上あれば十分"好増配銘柄"だと思いますが、高配当銘柄と投資効果を比較するとなると、5年で倍のペースは期待したいところです。

"高配当銘柄"の方は、アメリカ株なら配当利回り3.75%、英国株(現地非課税)なら3.55%、日本株なら3.25%とします。これは日本で投資する場合、税制上最終的に手元に3.00%を残せるラインになります。

税金は収入に応じて変わるので、配当以外の収入がある人なら、アメリカ株はもう少し低い利回りでも良く、日本株ならもう少し高い利回りが必要となるでしょう。

ここでは、アーリーリタイア後の配当のみの収入を基本に考えます。税制上の詳しいことは以下の記事をご覧ください。


  好増配銘柄の投資リスク


高配当銘柄は「成長が期待できない」「財務上の不安がある」などを理由に「増配が苦しく減配する可能性がある」とそのリスクを指摘されがちです。

対して、好増配銘柄は「成長が期待できる」「財務上の不安がない」と評価され、増配率が高い分、配当利回りが低く、株価は高いところで取り引きされます。

高い増配率を継続できれば、購入原価に対し、いつか高配当銘柄の利回りに追いつき追い抜く、さらに株価も上がる、と薔薇色の未来を期待します。

しかし、キャピタルゲインを目的とした投資や向こう5年くらいの配当を得るのが目的ならばともかく、アーリーリタイア後の長期的な見通しで投資するとなると、好調な業績はいつか停滞する時が来ることを想定しなければいけないと思います。

問題なのは、業績が決して悪くなくても成長が鈍化し増配率が緩んだ瞬間から株価が叩き落される危険があるということです。

その実例は、今現在の高配当銘柄に見て取れます。

  現在の高配当銘柄から学べること


📌 アメリカの主な高配当銘柄リスト
Ticker
Current
Perf.
HighDividend Data
PriceDiv.YPriceDiv.YDate5Y-Div.YYrs.eYrs.
MO55.425.77%-40.36%77.793.14%2017.064.04%49>49
CAH46.944.07%-95.80%91.911.49%2015.042.37%3232
K57.553.89%-51.45%87.162.29%2016.073.01%1444
GIS51.553.80%-41.51%72.952.63%2016.073.38%15>36
XOM81.564.02%-28.45%104.762.63%2014.073.52%3670
CVX125.493.79%-7.66%135.13.17%2014.073.97%3135
IBM143.024.39%-50.96%215.91.57%2013.033.48%2324
T31.886.40%-88.02%59.941.56%1999.015.39%3535
VZ58.614.11%-6.64%62.52.46%1999.104.51%1435
OKE69.814.93%-3.12%71.994.58%2018.075.20%1630
SO51.774.64%-5.54%54.644.10%2016.074.69%1870
D75.834.51%-12.49%85.33.61%2017.123.81%1547
DUK89.944.12%-2.07%91.83.88%2017.114.22%14>36
※highは過去最高値のデータ, Perfは過去最高値から現在の株価の下落率
※5Yは5年間平均, Yrs.は連続増配年数
※eYrs.は確認できる減配していない年数(>はそれ以上の可能性有)

上記のアメリカ高配当銘柄は以下の条件でリストしています。
  • S&P500採用銘柄
  • 時価総額$10bin以上
  • FwdP/E:20倍以下
  • 配当利回り:3.75%以上
  • 25年以上減配していないこと

現在のアメリカを代表する高配当銘柄が並びますが、公益株を除けばほとんどの銘柄が過去のある時期においては好増配銘柄です。

これらの銘柄の過去最高値での配当利回りは上で定義した高配当銘柄には当てはまらないものです。

言い換えれば、その後、株価が大きく下落したから高配当銘柄になったわけです。

もし過去最高値近辺、つまりその時点で好増配銘柄だと信じて購入してしまったら、とても配当では取り戻せない悲惨な下落が待ち受けていたということになります。

キャピタルゲインを目的にしていたなら諦めはついても、確実なインカムゲインを目的にバリュー銘柄に投資したつもりならちょっと諦めはつかないかもしれません。

精神的な打撃も大きく、これが好増配銘柄の投資に潜むリスクだと思います。

  好増配と高配当は行ったり来たり


結局、企業の成熟期においても好増配と高配当は行ったり来たりなのかもしれません。

業績好調が続けば好増配銘柄になり、低迷すれば高配当銘柄になります。

「成長が期待できる」「成長が期待できない」の予測も長期的には当てにならないことがたくさんあります。

いくら成長を期待され、業績が好調な好増配銘柄であっても、現在の配当利回りが2%にも満たなければ、高配当銘柄に追いつき追いこす確率は、高配当銘柄が再び成長を開始する確率と大差はないように思います。

だとしたら、将来の好増配銘柄とは実は現在の高配当銘柄の中から探した方が低リスクだとも考えられます。

Cool
「利回りは先に頂きましょう、貰った分は減りません」

  アーリーリタイアするなら減配しない今の高配当銘柄を選ぶ


インカムゲインを目的に銘柄選別をする場合、わたしは現時点での高配当銘柄で減配していない実績を優先します。

購入のタイミングは過去5年間の平均配当利回りを上回り、最高利回りとの乖離が小さい時です。

長年減配していない銘柄については、複雑な指標よりも配当利回りの方が素直に割安度を測れると思うからです。


面白いのは、長年減配していない高配当銘柄は配当利回りが上がるほど株価の下支えが見込めるということです。

どういうことかというと、たとえば、

  • 配当利回り2%の銘柄が株価50%下落したら利回りは4%になります。減配していない実績があってもこれは普通にありえることです。

  • 配当利回り4%の銘柄が株価50%下落したら利回りは8%になります。減配していない実績があれば基本的にありえない下落です。これが起きるのはほぼ減配する時と考えられます。

引き合いに出すのは申し訳ないですが、ゼネラル・エレクトリック(GE)クラフト・ハインツ(KHC)の場合は「減配していない実績」に乏しかったと言えます。

ゼネラル・エレクトリック(GE)の減配にいたる過程は、高配当銘柄への投資運用の参考になるかと思います。


アメリカ株に限らず、「好増配」「連続増配」よりも「減配しない」の方がはるかに重要なファクターだと思います。

  このブログの 📄 [米国株配当データ] ページ
    ➤S&P500採用銘柄の配当データ
    (US S&P500 Dividend Data - vers.2018)
    (Last Updated 28.Jan.2019)

(投資は自己責任で)


というわけで、好増配銘柄って意外と高配当銘柄のトータルインカムに追いつけないのよね。

LINK
アメリカ株の配当データがわかるサイト
  ➤Yahoo! Finance
  ➤Macrotrends (www.macrotrends.net)

日本株の配当データがわかるサイト
  ➤IR BANK (irbank.net)

Danke schön und Auf Wiedersehen / Thanks and See you

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