7月に株価が急落したJ-POWER(9513)を密かに買い進めています。
「非効率石炭のフェードアウト」を掲げた国のエネルギー政策に思うことです。
目 次
非効率石炭のフェードアウトをめぐる思惑
経産省は「非効率石炭のフェードアウト」と題した将来のエネルギー政策議論をスタートしました。
ざっくりとまとめると、2030年を目標に低効率発電所で作った電気を9割減らす、具体的には古い石炭火力発電所を廃止するということです。
📚 情報元:経済産業省
➤第26回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会
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国はCO2削減と再生可能エネルギーへのシフトを前面に打ち出していますが、2030年目標の電源構成を見ると一番比率を上げているのは "原子力" なのです。
📌 日本の電源構成:2018 vs 2030(目標)
(🔎 グラフはクリックすると大きくなります)
大義の裏には、そろそろ原発を動かしたいがための思惑が隠れているとわたしは理解しました。
非効率石炭火力の現状:J-POWER(9513)の株価急落要因
📌 電力会社別の電源構成(2018-2019)
* 経産省発表データに各電力会社の最新比率で微修正しています。
J-POWER(9513)は国内で83%を石炭火力に頼っています。沖縄電力(9511)=67%,北海道電力(950)=52%と続きます。
ただし、現時点で非効率石炭火力の対象となる比重ではJ-POWER(9513)は37%であり、沖縄電力(9511)=55%,北海道電力(9509)=39%よりも低くなります。
📌 7/13~8/3までの株価騰落率と配当利回り
* 沖縄電力のeYrs.は確認できるのが19年連続
経産省の「非効率石炭のフェードアウト」が発表された7/13以降、J-POWER(9513)の株価は-16%と上場来安値まで売り込まれ、他社と比較しても一際目立つ下落に見舞われています。
「非効率石炭」をめぐる材料以外に急落を誘うような悪材料は見当たらないので、J-POWER(9513)の80%を超える石炭火力の電源構成比重が嫌気されたものと考えてよさそうです。
しかし、各電力会社の騰落率を比較すると、必ずしも石炭火力の比重とは一致していません。北海道電力(9509)に至っては逆に上昇しています。
📌 電力会社の株主構成比較
日経225に採用されている東電(9501),中部電力(9502),関西電力(9503)の外国人株主比率が高いのは当然としても、非採用のJ-POWER(9513)が東電(9501)に次ぐ外国人株主比率になっています。
J-POWER(9513)が狙い撃ちされたように売られた背景には、流動性が低いところに外国人株主の比率が高いことが影響しているかもしれませんね。
J-POWER(9513)への投資
J-POWER(9513)については昨年から投資を始めました。
政府系の電力卸で特に送電事業を担っていたことに魅力を感じました。
正直、上場来安値を記録したこの状況から買い始めたかったですね。。。(タイミング悪ぅ)
J-POWER(9513)への投資でわたしが特に注目している点は、
① 大間原発の行方
J-POWER(9513)は大間原発を所有していますが、"建設中断中"のステータスです。
現時点国内では沖縄電力(9511)とともに停止中も含めて稼働原発を持たない電力会社になります。
J-POWER(9513)への投資を検討し始めた頃、この建設中断中の大間原発の行方が中長期的な株価を左右するだろうという見解をよく目にしました。
大間原発の行方が株価を抑えこんでおり、さらにもし最終的に中止となれば株価急落リスクがあるということです。
東日本大震災以降は原発稼働に否定的な気運が強く、中止があってもおかしくはない状況でしたが、今回の経産省の指針が原発稼働に向いたと判断するならば、J-POWER(9513)にとっては好材料ということになります。
しかし、散々材料視されていたこの話題は、現在の急落した株価には折り込まれておらず、完全に見過ごされていると思います。
一言
インカム投資という立場からは原発の運用リスクがない方が安心ですけどね。
② 発電設備容量比率
J-POWER(9513)の電力量における石炭火力の比率は80%と確かに大きいですが、これはJ-POWER(9513)が持つ発電設備容量とは異なります。
📌 J-POWER(9513)の発電設備容量比率(比較:東電)
J-POWER(9513)の発電設備容量では水力を含めた再生可能発電設備の比率が45%と一番大きいようです。
仮に石炭火力が全廃になったとしても、J-POWER(9513)には現在の発電電力量を凌ぐ発電設備容量を有しています。
参考までに東電(9501)の再生可能発電設備の比率は16%に過ぎず、ガス(石油)火力が60%も占めています。
国の看板は「CO2削減」と掲げつつも、国内最大の電力消費地域の主力火力を対象にしなかったあたりに国の思惑が読み取れるのではないでしょうか。
公共性の強い事業への干渉とは所詮"出来レース"と理解しておいた方がいいようです。(政権交代でも起きない限りは・・・)
多様な発電設備容量を持つJ-POWER(9513)が今現在石炭火力に偏った運用をしているのは単純にコストが安いからだと思います。
石炭火力から他の発電設備にシフトしたとしたら、コストはもちろん上昇することでしょう。
普通の企業であればコスト増=利益圧迫となりますが、公益セクターというのは必ずしもそうはならない。
変な話、コストが上がれば料金を引き上げれば良いという伝家の宝刀があり、一方でコストが下がったら強制的に料金を引き下げられてしまうわけで、そもそも過度な利益率の変化など求めてはいけない特殊なセクターです。
外国人投資家には理解できないことかもしれないけど。。。それが日本の電力会社なの。そうでなければ東電(9501)はとっくに潰れてる。
J-POWER(9513)が石炭火力を失ったとしても、それに変わる発電能力は有しており、かつ減配に至るような利益減は結果として生じない、とわたしは思います。
③ 海外事業
📌 J-POWER(9513)の海外事業の売上比率と事業利益率
J-POWER(9513)の売上に対する海外事業比率は過去5年でだいたい20%近辺で、同社は海外事業の取り組みに引き続き積極的な姿勢を示しています。
注目したいのは全体の事業利益率10%前後に対して海外事業の利益率は倍の20%近くをたたき出している点だと思います。
実質33%の利益は海外事業が出しているという計算になります。
海外事業は上にも下にもぶれるリスク要因であることは否めませんが、今回の「非効率石炭」の国内議論とは関係ありません。
この海外事業による利益貢献の背景も現在の急落した株価には折り込まれていないと思うわけです。
💬 いずれにしても目の前の株価を動かしたい人たちにとってはどうでもいいファクターなのでしょうけど。。。
業績と株主還元データ
📍 売上と最終益
📍 配当実績
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- 上場した2004年10月以降、リーマンショックを超えて一度も減配していない。
原発を稼働せずに火力中心の電力会社としては、米国企業と比較しても配当性向が安定しており、今現在の5%前後の配当利回りは割安と判断しました。
先月から買い増しペースを強めています。もしかしたら今年最大の勝負銘柄になるかも・・・
(投資は自己責任で)
というわけで、J-POWER(9513)の下がる株価に怯えながらも長い目で楽しみにしています。
LINK
Danke schön und Auf Wiedersehen / Thanks and See you
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