今日は"長期投資不適格"などと厳しい評価を受ける"斜陽産業"のことです。
過去に"斜陽産業"と蔑まれた業界はどうなったかなど考えてみます。
目 次
斜陽産業への投資は愚かなの?
今日の斜陽産業としてよく話題にされるのは、石油、たばこ、通信あたりでしょうか。
いずれも将来縮小、衰退、もしくは飽和状態が指摘されていて、"長期投資不適格"と厳しい評価を下すアナリストも少なくありません。
《石油業》
- エクソン・モービル(XOM)
- シェブロン(CVX)
- ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS-B)
- BP(BP)
《たばこ業》
- アルトリア(MO)
- フィリップ・モリス(PM)
- ブリティッシュ・アメリカン(BTI)
- JT(2914)
《通信業》
- AT&T(T)
- ベライゾン(VZ)
- NTT(9432)
- KDDI(9433)
- ドコモ(9437)
- シングテル(Z74.SI)
- チャイナモバイル(0941.HK)
さて、これら斜陽産業への投資は本当に愚かなのでしょうか?
ちょっと考えてみたいと思います。
かつての斜陽産業はどうなった?
今から20~30年前に斜陽産業と指摘されていたセクターと言えば、たとえば、製紙、繊維などが挙げられるかと思います。
《製紙業》
90年代にパソコンが一気に普及すると「紙(ペーパー)は不要」になると予測されていました。
しかし、フタを開けてみると文書作成と印刷のスピード化により、爆発的に紙(ペーパー)の需要は増えました。
運送能力の向上による工業紙の需要も伸びましたね。
最近ではストローなどでプラスチックを悪者に紙の利用が見直されています。
あの時代、「紙(ペーパー)は不要になる」という安易な予測は恥ずかしいほどに外れています。
王子製紙(3861:1873創業)、日本製紙(4114:1949創業)は現在も日経平均採用銘柄されている名門企業です。
そう、あの渋沢栄一さんが設立に携わった企業です。
アメリカでもインターナショナルペーパー(IP:1898創業)、パッケージング・コープ・オブ・アメリカ(PKG:1959創業)などがS&P500採用銘柄として健在です。
生活紙に特化すれば、キンバリー・クラーク(KMB:1872創業)、日本のユニチャーム(8113:1961創業)などは配当実績にも優れた優良企業です。
《繊維業》
発展途上国の工業化が進むに伴い、人件費などコスト競争力に劣り衰退すると予測されていました。
たしかに旧態然の繊維業は衰退したかもしれません。
しかし、東レ(3402:1926創業)に代表されるように新分野に活路を見出した企業は旧態然の繊維業時代を遥かに凌ぐ世界的企業に成長しています。
考えてみれば、トヨタ自動車(7203)の元は紡績業ですし、あのウォーレン・バフェットさんのバークシャー・ハサウェイ(BRK)の元も紡績業です。
かつて斜陽産業と言われた製紙業や繊維業の現在を見ると、「斜陽産業に投資するな」は明らかな誤りでした。
POINT
- 短絡的な業界予測は疑え
- 生き残る企業は次の事業を拓く
いかに当時の将来予測が短絡的で、「優秀な企業とは何か」の本質を見失った投資判断だったということでしょう。
そもそもまともな企業なら衰退事業にいつまでもしがみついて我が身消え行くのをただ待つわけがないですよね。
培ってきた技術と経験で次の柱となる事業を見出し活路を拓くのは当たり前のことです。
生き残りは簡単な闘いではないのだけど、それは斜陽産業だからではなくどの業界にも当てはまることだと思います。
今日、斜陽産業だからという理由だけで"長期投資不適格"などと評価するアナリストは疑った方が良さそうです。
石油業・たばこ業・通信業の将来
《石油業》
環境問題、電動自動車の流れが急速に進む中で石油業は衰退すると予測されています。
しかし、世界のエネルギー需要自体は発展途上国、未途上国の近代化に伴い今後も拡大すると思います。
原発稼働が否定される時代ですから、発電エネルギーとして現実的にシェール需要は拡大するはず。
ガソリンで車を動かすか、化石エネルギーを燃して作った電力で車を動かすかの違いであり、電動自動車になるから石油業は衰退するというのはあまりに短絡的だと思います。
そして、一番重要なのはオイルメジャーは旧態然の石油だけやっているわけではありません。
BPなどは既に着手していますが、再生可能エネルギーへの取り組みもオイルメジャーが本気になればあっという間にそのシェアを奪い取ると思います。
太陽光発電などはもてはやされていますが、オイルメジャーが本格参入したら、他の企業、個人では太刀打ちできない卸売価格に落ち込むのではないでしょうか。
一方で、将来必要となる電力量を再生可能エネルギーに期待するサイドでは、現在の手法では結果として森林伐採などの本末転倒した環境破壊が深刻化すると思われます。
行き詰った結果、また石炭・石油の化石エネルギーが見直されるのではないかと個人的には想像します。
東日本大震災で原発が止まった時、電力を補いわたしたちの生活を支えてくれたのは化石エネルギーだったことを忘れてはいけないと思う。
化石エネルギーを一方的に否定にするなら、まずはエアコンもスマホも無い生活を送ることなのでしょうけど、出来ますか?
石油に限らない総合エネルギーを事業領域にオイルメジャーは生き残るとわたしは思います。
もし、オイルメジャーが衰退することがあるとしたら、原発の安全が100%保障される時代になった時ではないでしょうか。
オイルメジャーと言えども核燃料を自由に扱うことは許されないと思うから。
《たばこ業》
現在の社会的価値観では間違いなく衰退産業だとは思います。この点に異論はありません。
健康被害を覆すような科学的証拠でも出ない限りは、いくら値上げを繰り返してもいずれこの事業だけでは損益岐点を割り込むと思います。
でも、いよいよ投資不適格に至る衰退までにはまだまだ長い時間があると思いますし、その時間内で医療など新分野に活路を見出す可能性は十分ありますよね。
何しろ大規模な新規参入が考えにくい既得権益事業なので、一企業としては競争が激しいハイテク企業よりも長生きし、さらに生き残る可能性は高いような気もします。
《通信業》
新規参入もたびたび発生する業界で、モバイル接続も一回りし、今後は新規契約数が伸び悩む飽和状態だと指摘されています。
特に日本においては人口減少による悲観的な見通しがあります。
でも、これから人生100年なんですよね?
自動車の免許と違って高齢になったら危険だからと返納しなきゃいけないものじゃないし、少子化で新規契約が減っても契約者数そのものは減るどころか増えるでしょう?
料金の値下げ圧力も儲かってるからこそなわけで、儲からなければ電力・ガスと同じように値上げするでしょう。
もうひとつ、これは全うな予測だと思うんだけど、5Gなど大容量通信がますます可能になれば、企業のあらゆるデバイスも直接キャリアに接続する時代になると思います。
今やビッグデータのアクセス先はクラウド上になりつつあるのだからなおさらです。
そうなれば爆発的な新規契約数の可能性が隠れていると思う。
通信業については何をもって斜陽産業と指摘されるのかよくわからないです。
わたしが馬鹿なの?
かつての製紙業や繊維業と同様に斜陽産業と言われるセクターの中に投資チャンスは隠れていると思います。
成長産業への投資リスクも同じこと
斜陽産業に対し成長産業への長期投資なら未来が明るいのかとなると結果は似たようなもので、振り幅という点ではむしろ成長産業の方がはるかに高リスクだと思います。
成長産業は競争が激しいから、10年20年一線に君臨し続けるというのはとても難しいことです。
ITバブル時代のハイテクの勢力図を思い出してみてください。
今なお、一線に君臨しているのは、マイクロソフト(MSFT)、インテル(INTC)、シスコ(CSCO)、アドビ(ADBE)、あとはかろうじてオラクル(ORCL)くらいじゃないでしょうか?
上で話題にしたかつての斜陽産業から生き残っている名門の数と大差ないかも。。。
現在をときめくアップル(AAPL)は破産寸前まで追い込まれていたし、Macintoshで組んでいた半導体のモトローラってどうなりました?
サンマイクロシステム、コンパック、ノベル、ネットスケープ、シマンテック、ブラックベリー・・・(一世風靡したハイテク企業を挙げれば切りがない)
それぞれどこかに買収されたんでしょうけど、投資先によっては斜陽産業より暗い未来でしたね。
なので、今現在のハイテクの勢力図もこれから10年20年続くとは思えない。つまり成長産業の個別銘柄にこそ"長期投資不適格"の💣が多いということになります。
余談ですけど、これからも生き残るのは元祖ハイテクの地味なIBMだったりしてとか思ったりもします。
マイクロソフト(MSFT)はハイテク企業よりもモノ真似の天才企業として投資価値を認めます。
(投資は自己責任で)
というわけで、斜陽産業でも成長産業でも行き着くところは企業次第ということでしょうか。
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Danke schön und Auf Wiedersehen / Thanks and See you
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