円高に振れると日経平均が下落する。
長らく定着しているこのお決まりの方程式も実態を探れば怪しいと思うところがあります。
目 次
円高による業績悪化は見せかけ
円高に振れると輸出業を中心に業績悪化が懸念され日経平均が下落するという方程式があります。
確かに円高による為替損が生じると輸出企業の決算は悪化します。
でも、よく考えてみると・・・
トヨタ(7203)やソニー(6758)といった日本を代表する輸出企業は円で国際取引をしているわけではありません。
ましてや獲得した外貨をすべて円に換金して持っているわけでもありません。
決算に出てくる会計上の数字ほど業績の実態が悪化しているわけではないと思います。
この点はキヤノン(7751)が決算発表時に強く説明していることでもあります。
グローバルに事業を展開するユニリーバ(UL)の決算は通常の売上の他に、USG=Underlying sales growth(為替調整後)、UVG=Underlying volume growth(売上量)といった為替損を除いた調整値、物理的な売上量の成長率を詳細に提示し、むしろ、このUSG,UVGをメインに彼らはプレゼンを展開しています。
ユニリーバ(UL)の表面的な決算は必ずしも増収増益ではありませんが、現地ベースでは確実に成長していることをアピールしており、そういった積極的なIR活動がアナリストたちの評価を得ているとも考えられます。
もっとも、アナリストたちが実態を把握しようとせず、企業から提示された紙上の数字しか見てくれないから、とも言えます・・・アナリストさんたちはさぞお忙しいことなのでしょう。
日本企業も定型の決算短信に「為替影響」とお決まりの記載をするだけはなく、より具体的で詳細な為替調整値、売上量を報告し、もっと言えば$ベースで出しても良いと思うのですけどね。
そうすれば、とても忙しくて(?)決算分析が出来ないアナリストさんたちも助かることでしょうし、機関投資(機)家の度を超えた煽り売りも多少は少なくなるのではないかと思います。
スーパー円高を乗り越えてきた日本企業
📈ドル円長期チャート
問題の為替ですが、ドル円は1994年に初めて100円を割り込み、1995年に80円を割り込みました。
リーマンショックの2008年に再び100円を割り込み、東日本大震災後に円史上最高値となる75.32円をつけました。
金融ジャーナリスト、アナリストたちは一様に日本経済に対する総悲観を発していましたが、これに対し、当時ホンダ(7267)の社長であった福井威夫さんは次のようにコメントしたことを覚えています。
「これから先もこういうもの(スーパー円高が続く)と思った方がいい」
どうにもならない円高をただ悲観するだけでなく、それを受け入れて進む覚悟が読み取れました。
震災で円高に振れてしまう現在のグローバル経済のしくみにはいささか理にかなわないものを感じてなりませんが、いずれにしても$1=100円を割る二度のスーパーインフレを日本企業は乗り越えてきたのです。
おそらく、ADRに今なお上場を続ける日本企業については、スーパー円高の備えは完了しているとわたしは見ています。
📌 ADR上場の主な日本企業
※5Yは5年間平均
※eYrs.は減配していない年数, Inc.はeYrs.期間中の増配回数
ADRに上場する輸出企業に共通するのは日本にだけ工場があるわけではなく、特定の一国、地域に頼っているわけでもありません。
トランプ大統領もトヨタ(7203)など既に北米を製造拠点としている日本企業に対してはどうも勘違いが先走っていたようです。
もしかすると、為替だけでなく地政学などあらゆる外的要因に世界で一番対処し備えを持っているのが日本企業なのかもしれません。
円高株安は絶好の仕込み時
今後FOMCが利下げに踏み切った場合、さらに円高に振れ日経平均が下落する局面も訪れるかもしれません。
しかし、円高による業績悪化は見せかけで財務の実態は強固であるとすれば、日経平均の下落は絶好の買い場ということになります。
正確には株価の上昇期待よりも株価下落によってさらに有利になる配当にです。
そんな局面がきたら、ADR上場の輸出企業、為替影響の少ない内需企業(下表)に勇気を持って入りたいと思います。
📌 日経平均採用の主な内需企業
覚悟を決めた時に限って、「あらっ」というくらい反応が薄かったりするものですが。。。
(投資は自己責任で)
というわけで、長い目で円高も悪くはないと思うようにしました。
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